社長コラム

悲しきポルチーニ茸

2015.04.15

2年ほど前のこと、「地球防衛軍の会」の飲み会で生のポルチーニ茸のパスタを出すという店に行った。いろいろ料理が出ていよいよという時、店員さんが「これがポルチーニ茸です」といって皿に乗せたそれを持ってきてくれた。生のポルチーニ茸はアンパンのようだった。

ポルチーニ茸は最近こそ耳にするようになったが日本ではまだまだ珍しいイタリアンの食材である。レストランのメニューにはあっても干したものを戻して使っている場合がほとんど、生にお目にかかる機会は少ない。

会に属していない長女も生のポルチーニ茸と聞いて参加した。彼女は珍しい食べ物が大好きなのだ。さて、そのお味について。皆で「へえー、こういうものなんだー」と言いながら食べたことは覚えているが、肝心の味については覚えていない。でもおいしかったんでしょうね。

その翌年、長女はドバイに駐在している日本人と結婚し新婚旅行先のパリに向かった。が、携帯を忘れてドバイからやってくる新郎と連絡がとれず大慌てしたらしい。こんな粗忽者が海外で生活出来るのだろうか。

新婚旅行から帰ってきてからドバイに旅立つまでの三ヶ月間、山田姓になった長女とはよく飲んだ。一緒にいられる残り少ない時間の多くを酒飲みに費やす父と娘、酒飲みはしょうがないと思うが、貴重な時間ではあった。

そんな日々の中、私は台所の乾物入れに薄い干し芋のようなものが入ったビニール袋を見つけた。スライスされた面の様子、その形。

干しポルチーニ茸だった。

長女が新婚旅行で買ってきたのだろう。彼女は世話になった家族に新婚旅行の土産として、ポルチーニ茸のパスタをごちそうしようとしていたのだ。

長いようで短い三ヶ月が過ぎ、長女はポルチーニ茸のことはすっかり忘れてドバイに旅立った。唯一その存在を知る私もポルチーニ茸のことはすっかり忘れていた。

長女がいなくなってしばらくたったある日の夕食、運ばれてきたみそ汁の中にたらーんとした変なものが入っている。次女が箸でつまんで「なにこれー」と言った。

ま、まさかポルチーニ茸か!

まずは食べてみてからだ。食べてみよう。たらーんとだらしない一枚を口に入れる。ポリポリとした食感と微かな埃臭さ、間違いなく茸だ。そして、みそ汁との相性の悪さは食べた人にしかわからないレベルである。残念ながらポルチーニ茸に間違いない。ポルチーニ茸をみそ汁で食べた人間は世界中で我々だけではないか。

空しさは感じるが、麩や昆布と一緒にあった干し茸をみそ汁に入れたお袋を責めることはできない。

気を取り直した私は、正体がわからず首をかしげている家族にむかって、それがイタリアンの高級食材、ポルチーニ茸であることを告げた。

追伸:
このコラムを読んだ次女が残っていたポルチーニ茸でリゾットを作ってくれた。
こちらはとても好評で表題の”悲しき”は解消されたかと思う。

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